DDoS(分散型サービス拒否攻撃)対策は、ネットワークやウェブサイトの運用において、DDoS攻撃から保護するためのセキュリティ対策です。
DDoS攻撃は、悪意のある攻撃者が複数のコンピュータやインターネット接続を制御して、特定のサービスやウェブサイトに大量のトラフィック(データの流れ)を送り込むことによって、サービスの提供を妨害する攻撃です。
攻撃者は、多数のコンピュータやネットワークリソースを使用して攻撃を行うため、「分散型サービス拒否攻撃」と呼ばれます。
DDoS攻撃は、ウェブサイトやオンラインサービスに対する重大な問題を引き起こす可能性があります。
攻撃が成功すると、サービスは遅延や完全な停止状態に陥り、利用者はサービスにアクセスできなくなり、ビジネスへの損害や信頼性の低下が生じます。
DDoS対策の目的は、攻撃者からのトラフィックを識別し、有害なトラフィックを遮断することです。
以下に、一般的なDDoS対策手法のいくつかを紹介します。
ネットワーク上のトラフィックを監視し、攻撃トラフィックを特定するための分析やフィルタリングを行います。
異常なトラフィックパターンや不審なIPアドレスを検出し、それらを遮断することで攻撃を防ぎます。
サーバーやネットワークの負荷を分散させることによって、攻撃が特定のリソースに集中しないようにします。
負荷分散装置やクラウドベースのサービスを使用して、トラフィックを均等に分散させることで攻撃を緩和します。
サーバーやネットワークの容量や処理能力を増強することで、攻撃トラフィックに対してより多くのリソースを確保します。
これにより、攻撃の影響を受けづらくなります。
追加のサーバー、帯域幅の拡張、クラウドサービスの活用などがキャパシティ増強の手法です。
DDoS攻撃が発生した場合に備えて、迅速に対応できる計画を策定します。
これには、攻撃を検知して適切な対策を講じるための監視システムや手順の整備、関係者間のコミュニケーションチャネルの確立などが含まれます。
クラウドベースのセキュリティサービスを利用することで、DDoS攻撃からの保護を強化できます。
クラウドプロバイダーは、攻撃トラフィックを検出・遮断し、リアルタイムの脅威インテリジェンスを提供することができます。
サービスの利用者やリソースへのアクセスに対して制限を設けることで、攻撃者のトラフィックを遮断します。
アクセス制御リスト(ACL)やファイアウォールルールを使用して、特定のIPアドレスやトラフィックパターンからのアクセスを制限することがあります。
これらの対策は、DDoS攻撃を予防・緩和し、ネットワークやウェブサイトの可用性を高めるために重要です。
ただし、攻撃の進化や複雑化に対応するためには、継続的な監視とセキュリティ対策の更新が必要です。
セキュリティ予算が限られている中小企業がDDoS対策サービスを導入するかどうかは、いくつかの要素に基づいて判断する必要があります。
中小企業がウェブサイトやオンラインサービスを提供している場合、DDoS攻撃によるダウンタイムや運用の中断は深刻な影響を及ぼす可能性があります。
攻撃のリスクや潜在的な被害を評価し、事業にとっての重要性を考慮することが重要です。
DDoS対策サービスは、通常、月額料金やトラフィックの量に基づいた課金体系があります。
中小企業は、予算に余裕があるかどうかを考慮し、対策サービスの導入費用やランニングコストを評価する必要があります。
中小企業のネットワークやウェブサイトのインフラストラクチャは、攻撃に対してどの程度の耐性を持っているかを評価する必要があります。
既存のセキュリティ対策やインフラストラクチャの強化によって、対策サービスを必要としない場合もあります。
対策サービスの導入には、設定や監視、トラフィックの分析などの管理作業が必要です。
中小企業は、それらの業務を遂行できる十分な内部リソースを持っているかどうかを評価する必要があります。
中小企業がウェブサイトやオンラインサービスを提供しており、それが主要な収益源や顧客との関係構築に重要な役割を果たしている場合、DDoS攻撃によるサービスの停止や中断は致命的な影響を及ぼす可能性が高まります。
中小企業が競争激しい業界に属している場合や、商圏内で主要なプレイヤーとして存在している場合、攻撃者が競争相手や業界にダメージを与えるためにDDoS攻撃を行う可能性があります。
中小企業が過去にDDoS攻撃の被害を受けた経験がある場合、再度攻撃を受けるリスクが高いと考えられます。
攻撃者は過去の攻撃の成功を基に、再度攻撃を試みることがあります。
中小企業のネットワークやウェブサイトのインフラストラクチャがセキュリティの脆弱性を持っている場合、攻撃者はそれを悪用してDDoS攻撃を行う可能性が高まります。
セキュリティ強化のための対策が不十分な場合には、攻撃の標的になりやすいです。
中小企業が顧客の個人情報や機密データを取り扱っている場合、それらの保護が求められます。
DDoS攻撃は、データの漏洩や盗難を目的とするものではありませんが、攻撃が起きた場合にはセキュリティの脆弱性が露呈し、他の攻撃に悪用される可能性があるため、保護対策が重要です。
中小企業がDDoS対策サービスを導入するメリットは以下のようになります。
DDoS対策サービスは、攻撃トラフィックを検知・遮断するための専門的な技術とリソースを提供します。
これにより、中小企業のサービスの可用性や信頼性が向上します。
対策サービスは、攻撃トラフィックをフィルタリングし、サーバーやネットワークへのダメージを最小限に抑えることができます。
これにより、インフラストラクチャの保護が強化されます。
中小企業がDDoS対策サービスを選ぶ際には、以下のポイントに着目することが重要です。
DDoS対策サービスは、効果的な攻撃検出と防御機能を提供していることが重要です。
サービスが異常トラフィックを検出し、攻撃トラフィックを遮断または吸収できる能力を持っているかを確認しましょう。
また、異常トラフィックを正常なトラフィックと区別するための高度な分析機能やアルゴリズムの使用も重要です。
中小企業が成長していくにつれてトラフィック量が増加する可能性があります。
DDoS対策サービスは、トラフィックの急増にも柔軟に対応できるスケーラビリティを持っていることが重要です。
また、可用性も確保されているかどうかを確認しましょう。
サービスのダウンタイムは、攻撃に対する保護を失うリスクを伴います。
DDoS攻撃は迅速な対応が求められるものです。
DDoS対策サービスプロバイダが攻撃の検出から遮断までのレスポンス時間を保証しているかを確認しましょう。
また、24時間体制でのサポート体制や専門家へのアクセスがあるかどうかも重要です。
サービスは中小企業のニーズに合わせてカスタマイズ可能であるべきです。
異なるトラフィックパターンや特定のアプリケーションに対して適切なポリシーを設定できるかどうかを確認しましょう。
また、使いやすいインターフェースや運用の容易さも重要な要素です。
中小企業にとってコスト効率の高いソリューションが求められます。
DDoS対策サービスの価格設定や契約条件を評価し、予算に合致しているかどうかを検討しましょう。
ただし、安価なサービスであっても十分なセキュリティレベルと機能を提供しているかどうかを確認することも重要です。
価格だけでなく、コスト効率を総合的に評価しましょう。
DDoS対策サービスは、攻撃のログや分析情報を提供することで、攻撃の詳細なモニタリングやインシデントの解析を可能にするべきです。
これにより、将来の攻撃への対策やセキュリティポリシーの改善に役立ちます。
DDoS対策だけでなく、さまざまなセキュリティレベルのサービスを提供しているかどうかも考慮しましょう。
例えば、ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)や侵入検知システム(IDS)、脆弱性スキャンなど、総合的なセキュリティ対策を提供しているプロバイダがあれば、一元管理が容易になります。
メーカー | F5ネットワークスジャパン合同会社 |
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アメリカの大手企業各社にテクノロジーを提供しているF5社が開発。スタンドアローンの専用アプライアンスか、「BIG-IP LTM」に搭載することで、高速かつ安定したセキュリティを提供してくれます。
ネットワークファイアウォール製品や侵入防御システムとは異なり、行動分析、暗号化、ボット対策など独自の技術を駆使して、脅威から広範囲にWebアプリケーションを守る製品です。
所在地 | 東京都港区赤坂4-15-1 赤坂ガーデンシティ19階 |
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電話番号 | 記載なし |
メーカー | 株式会社ラック |
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Webサイトの改ざんや不正侵入、サービス停止を引き起こすDDoS攻撃などの脅威からWebサイトを守ってくれる、クラウド型のWebセキュリティ。
大規模DDoS攻撃の対策もお任せ。全世界230,000台以上※のサーバ群で構成される、Akamai(アカマイ)の大容量ネットワークを駆使して、インシデントによるサービス停止を防いでくれます。
所在地 | 東京都千代田区平河町2丁目16番1号 平河町森タワ |
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電話番号 | 記載なし |
メーカー | Amazon Web Services |
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DDoS攻撃やSQLインジェクション攻撃、クロスサイトスクリプティング攻撃、OSコマンドインジェクション攻撃などからWebアプリケーションを保護してくれる、AWS利用者向けのWAFです。
無料で利用できるAWS Shield Standardと、有料のAWS Shield Advancedの2種類をラインアップ。リーズナブルな料金や、数クリックでセットアップ可能な導入ハードルの低さなども魅力です。
所在地 | 【AWSジャパン株式会社】東京都品川区上大崎3-1-1 目黒セントラルスクエア |
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電話番号 | 記載なし |
メーカー | 株式会社アイロバ |
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WAFだけでは防ぎきれないDDoS攻撃や改ざんなどを防いでくれる、総合セキュリティサービスです。強力な防御力で、さまざまな脅威からWebサイトを守ってくれます。
月額45,000円~145,000円(税不明)で、さまざまな脅威に対処できる機能やサポートを標準装備。最大トラフィックではなく、3か月ごとの平均トラフィックを基準とした料金設定で安心して利用が可能です。
所在地 | 東京都千代田区麹町1-8-1 半蔵門MKビル4F |
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電話番号 | 03-6276-8020 |
メーカー | ペンタセキュリティシステムズ株式会社 |
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全世界の異なるロケーションのネットワークを活用し、高度なDDoS攻撃防御を提供しています。対応帯域の広さ、処理スピードの速さ、高度なセキュリティ・インテリジェンス活用などが強みです。
単独での導入はもちろん、「Cloudbric WAF+」や他社WAFとの組み合わせで利用することも可能。24時間365日、日本語でサポートしてくれる点も魅力です。
所在地 | 東京都新宿区市谷田町3-8 市ヶ谷科学技術イノベーションセンタービル12F |
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電話番号 | 050-1790-2188 |
メーカー | Coltテクノロジーサービス株式会社 |
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大量のフラッド攻撃、ステルス型アプリケーションレイヤー攻撃、SSLパケット攻撃などさまざまなDDoS攻撃の脅威を検知・排除。専門家チームが企業ごとに適切なルールを設定してくれるので安心です。
すべてのIPアドレスを防御する「スタンダードサービス」と2つのIPアドレスだけを防御する「ベーシックサービス」の2タイプを用意。ニーズに合わせて適切なプランを選ぶことが可能です。
所在地 | 東京都港区六本木1-6-1 泉ガーデンタワー 27F |
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電話番号 | 記載なし |
メーカー | 株式会社エヌ・ティ・ティピー・シーコミュニケーションズ |
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NTTPCのインターネット接続サービス「InfoSphere」や「WebARENA Symphony」、「クラウドWAFセキュリティオペレーションサービス」のオプションとして利用できるセキュリティサービスです。
NTTPCのバックボーンネットワーク上にある設備にてDDoS攻撃を防御。検知した攻撃のみを排除するため、サービスを停止することなく、安定したインターネット接続環境を実現することが可能です。
所在地 | 東京都港区西新橋二丁目14番1号 興和西新橋ビルB棟 |
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電話番号 | 記載なし |
メーカー | フォーティネットジャパン株式会社 |
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急激に進化しているWebアプリケーションへの攻撃に対応できる、Webアプリケーションファイアウォールです。機械学習(ML)を活用することで、ゼロデイ攻撃のブロックや誤検知の抑制を実現しています。
帯域幅占有型攻撃、レイヤー7(アプリケーション)攻撃、SSL/HTTPS接続攻撃などに対応可能。FortiGateファイアウォールやFortiSandboxとの連携で、高度な持続的脅威からの保護も行えます。
所在地 | 東京都港区六本木7-7-7 Tri-Seven Roppongi 9F |
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電話番号 | 記載なし |
メーカー | 株式会社インターネットイニシアティブ |
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国内外のIIJバックボーン内に対策システムを配備し、大規模なDDoS攻撃からネットワークシステムを守ってくれるサービスです。専門エンジニアが24時間365日体制で運用してくれるので安心です。
攻撃を受けているIPアドレスだけをピンポイントに対策することも可能。これにより、防御による影響を最小限に抑え、正常な通信までDDoS対策基盤で破棄されてしまうことのないようにしてくれます。
所在地 | 東京都千代田区富士見2-10-2 飯田橋グラン・ブルーム |
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電話番号 | 03-5205-6500 |
メーカー | KDDI株式会社 |
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DDoS攻撃の防御に特化したセキュリティサービスです。レイヤー4レベルはもちろん、アプリケーションレイヤーレベルのDDoS攻撃も防御することが可能です。
10base月額220,000円(税込)~の固定課金プランと、DDoS攻撃の防御時間実績に応じて料金が変わる従量課金プランを用意。従量課金プランは、10base月額55,000円(税込)~です。
所在地 | 東京都千代田区飯田橋3丁目10番10号 ガーデンエアタワー |
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電話番号 | 03-3347-0077 (本社代表) (有料) |
メーカー | 株式会社サイバーセキュリティクラウド |
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非常に多くの国内導入社実績を持つ、クラウド型WAFです。国産システムならでは、24時間365日体制で日本人スタッフが電話でサポートをしてくれるので、初めての企業も安心です。
「DNS切り替え型WAF」「エージェント連動型WAF」の2タイプがあり、ニーズに合ったセキュリティ対策を実現することが可能。DDoS攻撃や改ざんなどからWebサイトを守ってくれます。
所在地 | 東京都品川区上大崎3-1-1 JR東急目黒ビル13階 |
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電話番号 | 03-6416-9996 |
DDoS対策は、ファイアウォールやIPS・IDS対策など、他のネットワークセキュリティとはどう違うのか、簡単に解説します。
DDoS対策の目的は、ネットワークやウェブサイトに対する分散型サービス拒否攻撃(DDoS攻撃)からの保護です。
一方、ファイアウォールやIPS・IDSは、様々なネットワークセキュリティ脅威(ハッキング、マルウェア、不正アクセスなど)からの保護を目指しています。
DDoS対策は、特定のサーバーやネットワークリソースに対する大量のトラフィックを遮断することを重視しています。
一方、ファイアウォールやIPS・IDSは、ネットワーク全体や特定のセグメントにおけるセキュリティを強化することに焦点を当てています。
DDoS攻撃は、攻撃者が複数のソースから大量のトラフィックを生成し、サービス提供の妨害を狙うものです。
一方、ファイアウォールやIPS・IDSは、不正なアクセスや攻撃パターンを検出し、遮断することによって攻撃を防ぎます。
DDoS対策では、攻撃トラフィックの特徴や挙動を分析し、それを検出・遮断する手法が主要なアプローチとなります。
ファイアウォールやIPS・IDSでは、署名ベースの検知や行動解析、侵入防止ルールの適用などが一般的な手法です。
DDoS対策は、大規模なトラフィックの処理や攻撃者の分散された攻撃に対してスケーラブルな対策を提供する必要があります。
一方、ファイアウォールやIPS・IDSは、特定のネットワークセグメントやエンドポイントに適用され、より局所的なセキュリティ対策を提供します。
これらの要素からわかるように、DDoS対策は特定の攻撃タイプに特化したものであり、主にトラフィックの分析と遮断に焦点を当てています。
一方、ファイアウォールやIPS・IDSは、より広範なセキュリティ脅威に対処するための総合的なセキュリティ対策を提供します。
中小企業がネットワークセキュリティを強化する際には、DDoS対策だけでなく、ファイアウォールやIPS・IDSなどの一般的なセキュリティ対策も検討することが重要です。
ネットワークセキュリティは総合的なアプローチが求められるため、複数のセキュリティ対策を組み合わせることでより強固なセキュリティ環境を構築することができます。